うさぎの数え方はなんで「羽」なの?

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ウサギ

普段使っていることが多い動物の数え方は「匹」「頭」「羽」です。 しかし、中には数え方が曖昧な動物もいます。代表的な例としてうさぎが有名です。教科書などでは「羽」と数えますが、日常会話では「匹」と数える方が多いのではないでしょうか。

うさぎ

うさぎはなぜ2種類の数え方「匹」「羽」が浸透しているのか調べてみました。その答えは日本の文化や日本語の成り立ちにありました。

うさぎの正しい数え方は、日本の昔の文化から「一羽」「二羽」と鳥と同じく「羽」が正しい数え方です。この数え方は、うさぎを家畜として扱っていた時代に使われていた数え方で、日常生活では「匹」と数えても問題ありません。

「兎」といううさぎの数え方は間違い❌

「2兎を追うものは1兎をも得ず」ということわざは日本では度々使われています。1兎は「1羽のウサギ」をまとめて表した単語です。他にもこの表現方法は「一難去ってまた一難」や「一石二鳥」など多く用いられています。

ことわざだけで「兎」という単位は存在しないので、間違いです。

ことわざは、教訓や知識を遠い世代にまで伝えるため生まれた言葉です。そのため分かりやすくなければ人々に伝わらず、遠い世代の人々に大事な教えを残すことができません。言葉を聞いただけで意味が理解できて、多くの人に広まりやすい表現にした結果、1羽のうさぎを1兎と表現しているので、日常でうさぎを「1兎」「2兎」と数えることはないでしょう。

その他のうさぎの数え方

うさぎを「1羽」、「1匹」と数える他にも様々な数え方があります。室町時代の礼儀作法について書かれた本ではうさぎを「1匹」ではなく「2耳」と数えたり、明治時代に書かれた本では「1匹」を「片耳」と呼び、「2匹」いると「両耳」と数えていました。

うさぎを「1羽」と数えるようになった江戸時代から、昭和初期の文学作品でも作家によって数え方が「1匹」や「1つ」と分かれていて、作家たちもうさぎの数え方について迷っていたことがわかります。

うさぎの数え方の由来

動物が「1匹」や「1頭」と数えられるように、うさぎの数え方にはさまざまな由来があります。

有名な説としては、江戸時代初期に第5代将軍徳川綱吉によって「生類憐みの令」が発令されたときに、うさぎを鳥に見立てて食べたという説と、うさぎの名前が鳥と似ているからという説から来ています。

他にもいくつかの説がありますが、どれもはっきりとした詳細な文献が残っていないため、事実に裏付けられた有力な説ではありませんでした。

うさぎの数え方の由来①「僧侶のこじつけ」説

徳川綱吉
徳川綱吉
僧侶

江戸時代に徳川綱吉は、仏教の影響を受けて生類憐みの令を発令し、4本足の動物を食することを禁止しました。それでも普通の人たちは誤魔化しながら食べていましたが、仏教の道を歩む僧侶は誤魔化して食べる事もできません。

その一方で、昔のうさぎは非常に凶暴で田畑が被害を受けていました。そこで僧侶は、長い耳や後ろ足で立つ姿や跳ね回る姿から、うさぎは鳥の仲間だから食べてもいいとこじつけます。このこじつけを徹底するためにうさぎは鳥と同じ数え方になりました。

うさぎだけでなく猪を「山鯨」と呼んで食べたり売ったり、武士でも貴族でも薬食いといって動物を食べていたことがわかっています。今ほど豊かに農作物ができる時代ではなかったので、動物の肉は数え方や名前を誤魔化してでも食べなければならない重要な食料でした。

うさぎの数え方の由来②「うさぎは2羽の鳥だった」説

鵜
鷺
青鷺

うさぎを鳥と分類したのは名前が関係するという説もあります。うさぎは鵜(う)と鷺(さぎ)で2羽の鳥といって1羽と数えられていたという説です。しかしこの説には有力な資料が残っておらず、猟師のシャレとも言われています。

そのほかのうさぎの数え方

「片耳」や「両耳」などのうさぎの数え方の由来としては、

*うさぎの肉の味が鳥に似ていた

*うさぎの耳が大きい羽に見えたから

*うさぎは鳥と同じように網で捕まえていた

*うさぎの耳を括っていたから「1把」と数えて「1羽」に変化した

など、うさぎと鳥を関連付けている説が多く残っています。特に意味はなくうさぎを狩っていた猟師からうさぎの数え方が生まれたとも言われています。

二兎追うものは一兎をも得ずの「兎」の由来

うさぎを使ったことわざで有名なものは「二兎追うものは一兎をも得ず」ということわざです。
ローマのことわざ 「If you run after two hares,you will catch neithre.」を日本語に訳したものです。

一兎や二兎はうさぎの正しい数え方ではありません。しかし、「村を代表して狩に出ていた2人の若者が、素早く動くうさぎを2羽同時に捕まえようとして2羽とも取り逃してしまった。」という語源から一番近い翻訳で、短い言葉でも意味や教訓が伝わりやすいことわざです。

全く同じ意味として「虻蜂取らず」や「二つの腰掛けの間に座れば尻餅をつく」と普段の日本語と変わらない表現をしたことわざ もありました。

なぜ動物を数えるときに単位が必要なのか

私たちが生き物を数える際に使っている数字の後につける単位は、助数詞という名前の言葉です。日本語はこの助数詞の数が非常に多く、その数は現在使われていない言葉を含めると500種類もの助数詞が存在しています。

その言葉は日常会話の中で、「相手に数える対象がどんな様子であるのかを言葉だけで伝える」という重要な役目を持った言葉です。例えば1枚という数え方であれば、薄い紙状の物体であること、1本と言えば細長い何かであったことを実物や絵を見なくても数え方で形状が想像できます。

うさぎの数え方が分かれる理由は、この形状を伝えるための助数詞の役目が深く関わっていました。

一般的な動物の数え方

飼育している動物の数え方は1匹

動物の数え方は原則「匹」です。匹とは2つの対象が対であることを表しており、匹敵という言葉は互角であることを意味し、同じ織物が2反ある場合などに使用されます。

なぜ2つの物を表す数え方が、動物に同じ助数詞を使われるかというと、昔は人間の生活には欠かせない動物である馬が由来でした。荷物や人を引く馬の後ろ姿を他の人は見ていたので、二つに割れた馬の尻が印象に残ったことと、人間が馬の綱を引く様子を込めて動物の数え方に変化します。

そして今現在では、飼育している動物の数え方は1匹と数えるようになりました。この数え方は、源氏物語で用いられていることが確認されており、動物を匹と数えるようになってから長い年月が経っていることがわかります。

大きい動物の数え方は1頭

ウサギなどの小動物は匹と数えますが、大きい動物は「頭」と数えることが多いのではないでしょうか。数え方が匹から頭に変わるのは動物の大きさ、対象の人間の生活に関わっていること、貴重な生物かどうかということが基準です。

牛

牛や象は、人の手で抱えられないので1頭2頭と数え、うさぎや犬は人の手で抱えられるので1匹2匹と数えます。例外として人が抱えられる大きさの動物でも、盲導犬や絶滅の恐れがある動物は1頭と数えます。

助数詞の「頭」は「匹」と比べるとまだまだ歴史が浅く、この数え方が使われるようになったのは明治末期のことです。英語で家畜を数えるときは動物学の文章で「head」と表記されており、それを日本語で「頭」と翻訳し家畜の数え方として浸透しました。

うさぎの正しい数え方や、空を飛ばないうさぎが鳥と同じ数え方をする由来を紹介しました。人に聞かれたときや言葉を知り始めたお子さんが疑問に思った時は1羽と数えるよ、と教えたほうがいいでしょう。

しかし言葉は時代によって変わっていきます。現在SNSなどを見ると昔は使われていない言葉がたくさん溢れており、うさぎも今は1匹と数えても間違いではありません。なので、うさぎの数え方は時と場合によって使い分けると考えてください。

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